Monday, October 23, 2006

ポロ・ラルフ・ローレン

今回のブランドの授業はラルフ・ローレンのケースでした。高校時代にみんなで競ってラルフのポロシャツやらかばんやらソックスを買っていたな~、そしてみんな襟をたててポロシャツ着ていたな~なんて少し感傷的になりながら(笑)ケースを読みました。

ラルフ・ローレンは「アメリカン・ドリーム」の象徴らしいです。ファッション業界にコネがあったわけでもなく、普通の労働階級の家庭に育ったローレン。最初はネクタイのブランドからスタート。伝統やカレッジ、スポーツといった東海岸のティストを含み、これまでのネクタイとは異なるデザイン、色、素材を売りに成功を収めます。この時にポロというスポーツをロゴにしようということで、彼の名前にさらにポロとつけたのがポロ・ラルフ・ローレンの始まりです。

その後ポロシャツを作りさらに成功を収めた彼はその製品群を洋服へと広げます。とはいうものの、「私はファッションを作っているのではない。ライフスタイルを生み出しているのだ」という彼独自のポリシーのもと、様々な世代をターゲットにしたブランドを立ち上げました。ちなみに数年前の時点で60にもおよぶブランドを所有していたそうです。

ここまでなぜ短期間でビジネスを拡張できたかというと、ライセンス契約によるところが非常に大きいのが特徴。ブランド名、ロゴの使用を許可し、デザイン、製造、価格設定までライセンス契約先に依存したことにより、実は会社のブランドイメージをコントロールしきれず、安価な製品がマーケットを出回ったりしてしまいました。この軌道修正として、ここ数年はこうしたライセンスを逆に買い戻し、イメージの著しく悪いブランドは廃止し、高級層へのブランド拡張を図っています(高級スーツ、家具など)。

ちなみに、ポロ・ラルフ・ローレンの売上の7割はアメリカ。次いで大きいのが日本(たしか15%ぐらい)。このブランドはヨーロッパや他のアジアではほとんど売れていません。クラスでも議論がまっぷたつに分かれました。まず、アメリカと日本では最近の高級化戦略はかなり好意的に受けいられています。そもそもアメリカ感を売りにしたブランドなので、アメリカ人には受けがいいだろうし、日本人もアメリカ文化を好ましく思っているし、販売は路面店はなくとも(今年表参道にオープンしたそうですが)西武などのデパートで販売されており、ブランドとしての権威はなんとなく保たれていたのではないでしょうか。

一方、反アメリカ?(反ポロ・ラルフ・ローレンといった方が適切ですが)となるカナダやヨーロッパ、中国の国々の学生は、「ポロは高級ブランドではないし、今後高級ブランドになることはありえない」といっています。まあ文化的政治的な反対、というよりも、ラルフ・ローレンがこうした地域をほとんどライセンス契約にしブランドのイメージコントロールを行わなかった、というのが原因でしょう。カナダ人の学生は「シアーズでセールで売っているポロを見てしまうととてもじゃないけどいい印象は受けない」と言っていたし、中国人の友人は「近所の工場で安価に作られているポロを見ると高級感は感じない」と言っていました。ポロ・ラルフ・ローレンで昔働いていたという教授も、「こんなに長く会社を経営しているのに、ローレンはまだ中国に行ったことがないんだ(=中国を主要マーケットとして認識していない、あるいは主要マーケットに育てようと考えていない)」とも。

なかなか面白いトピックです。流通の戦略によってブランドのイメージが大きく変わります。ブランドのイメージを維持しようとするには直営店が必要で、そうなると投資を含めたコストは非常に大きな負担となります。未開拓の地域ではリターンがとれないリスクを避けるため、ライセンス契約で知名度を高め、初期コストを低くして利益を比較的容易に生み出し、余裕がでてきたところで徐々に投資を大きくしていく(直営店の進出など)、というパターンが多いようですが、これを大きな%で行ったのがポロ・ラルフ・ローレン(その他ジャン・ポール・ゴルチエなども同様)というわけです。

普通こうした流通戦略は面白くないことが多いのですが(笑)、こうしたブランドやファッションが絡むととてもわかりやすいし、なによりもケースを読むのが楽。5分ぐらいでさらさらさら~と読めてしまいます。ちなみにこの授業で扱うケースはほとんど教授による学内製作。さすが、ESSECの売りのひとつのコースです。

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